Column
コラム
飼っている老犬が寝たきりになってしまった飼い主の方はいませんか?
年を重ねた犬は、寝たきりになることがあります。しかし、いざ愛犬が寝たきりの状態になると戸惑いや不安が生じ、具体的にどのような介護が必要かわからなくなることもあるでしょう。
そこで本記事では、愛犬が寝たきりになったときに飼い主ができることを詳しく解説します。寝たきりになる原因、寝たきり状態の犬に起こりがちな問題とその対処法についても紹介。また、愛犬の健康を維持するためのケア方法についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1.老犬が寝たきりになる原因
老犬が寝たきりになる原因の一つに、「細胞の老化」があります。
犬の体内にある細胞は、染色体の末端に位置するテロメアという部分が一定の長さまで短くなると、細胞分裂ができなくなります。この状態になると、細胞は修復や再生ができなくなり、周囲の細胞の老化も進行しやすくなります。
次第に、体内の細胞数が減少し、全体的な体の機能が低下していきます。これにより、身体機能だけでなく、感覚機能や精神的な働きも衰え、最終的に老衰状態・寝たきりになってしまうのです。
また、細胞の老化以外にも、以下のような要因が老犬の寝たきりにつながることがあります。
寝たきりになる原因
・運動器疾患(特に関節炎) ・末期がん ・心臓病や膵炎などの基礎疾患 ・慢性的な下痢 |
これらの病気が原因となって寝たきりになることも考えられます。愛犬が寝たきりになった際には、病気の可能性も視野に入れ、早めに動物病院での診察を検討することが重要です。
2.寝たきりになった愛犬に飼い主ができること一覧
愛犬が寝たきりになった時、飼い主がしてあげられるサポートとして大きく以下の6点が挙げられます。
寝たきりになった犬に飼い主ができるサポート
1.清潔に保つ工夫をする 2.床ずれを予防する 3.排泄をサポートする 4.食事をサポートする 5.ストレッチ・マッサージをする 6.適度な刺激を与える |
2-1.清潔に保つ工夫をする
寝たきりになると入浴・排泄が難しくなり、体が汚れやすくなります。汚れた状態が続くと、感染症や皮膚トラブルを引き起こす可能性があるため、飼い主が積極的にケアを行い、愛犬の清潔を保つことが重要です。
寝たきりの犬を清潔に保つ方法
・蒸しタオル・ウェットティッシュで汚れを取る ・部分浴をする ・水のいらないシャンプーを使う ・お尻の毛をカットする ・(被毛が長い犬種の場合)尻尾に包帯を巻いておく |
2-1-1.蒸しタオル・ウェットティッシュで汚れを取る
犬は、寝ているだけでも皮脂によって体が汚れていきます。汚れを放置すると皮膚トラブルにつながるため、こまめに蒸しタオルやウェットティッシュを使って体を清潔に保ちましょう。汚れは毛の流れに沿って優しく拭くと、取れやすいです。
蒸しタオルを作る手順
|
汚れを拭き取った後は濡れたままだと体が冷えるため、仕上げに乾いたタオルを押し当ててしっかりと水気を取ります。
2-1-2.部分浴をする
老犬にとって、全身をお湯につける入浴は体力の消耗が大きいです。そのため、負担の少ない部分浴を行うことがおすすめです。
部分浴の方法
・浴室で行う場合は、汚れた水が流れるように傾斜をつけ、すのこを敷いてその上に犬を寝かせます。体の汚れている部分にお湯をかけて、優しく洗い流しましょう。 ・浴室までの移動が難しい場合は、ベッドや寝床に厚手のトイレシーツやバスタオルを敷き、たらいに用意したお湯を手でかけて部分的に洗います。この方法なら、移動せずに簡単に清潔を保つことができます。 |
2-1-3.水のいらないシャンプーを使う
水のいらないシャンプーであればすすぐ必要がないため、浴室に移動する必要もなく犬の体を冷やす心配もありません。
水のいらないシャンプーの使い方
低刺激のシャンプーを選ぶ | 老犬の皮膚は敏感になっているため、低刺激タイプのシャンプーを使うことが大切です。 |
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シャンプーを優しくなじませる | 手に取ったシャンプーを愛犬の体に優しくなじませ、汚れを浮かせるように洗います。 |
乾いたタオルで拭き取る | 最後に、乾いたタオルで泡と一緒に汚れをしっかりと拭き取りましょう。シャンプーの成分が残らないようにすることがポイントです。 |
2-1-4.お尻の毛をカットする
寝たきりの犬は、排泄物でお尻が汚れやすくなります。清潔を保つために、肛門周りの毛をあらかじめカットしておくと、汚れを拭き取りやすくなります。
カットするときはバリカンで肛門の辺りを内側から外側に向かって、肛門がはっきりと見えるくらい短く剃ると、清潔を保つうえで効果的です。
2-1-5.(被毛が長い犬種の場合)尻尾に包帯を巻いておく
被毛が長い犬種の場合、尻尾に包帯を巻くことで、汚れがついたときに包帯を取り換えるだけで済み、尻尾を清潔に保つための拭き取りの手間が省けます。
包帯は尻尾のつけ根から先端に向かってらせん状に巻きます。強く締めすぎると血流を妨げるため、優しく張りを持たせながら巻くのがポイントです。
包帯を購入するときは伸縮性があり包帯同士が粘着するタイプのものを選ぶと、ズレにくく巻き直し・取り外しがしやすいのでおすすめです。
2-2.床ずれを予防する
同じ姿勢で長時間寝ていると、体重が床と接触している皮膚に集中して圧迫され、その部分の血流が悪くなり、やがて皮膚が壊死する「床ずれ」が発生します。床ずれは圧迫によるものだけでなく、皮膚の蒸れ、痩せすぎ、移動時の摩擦などによっても起こりやすく、寝たきりの老犬にとって非常に注意が必要な健康問題です。
床ずれの初期症状は、毛が折れたり薄くなったり、皮膚が赤くなる程度ですが、症状が進行すると水ぶくれができ、皮膚に穴が開き、最悪の場合、筋肉や骨が露出し、感染症の原因となることもあります。床ずれは進行が早く、重症化すると治療に時間がかかるうえ再発しやすいため、早めの予防が重要です。
床ずれを予防するためには、体圧を分散できるマットの使用と寝返りのサポートが効果的です。低反発マットは体が沈みすぎて湿気や熱がこもりやすいため、高反発の体圧分散マットや無圧マットのように、圧力を適度に分散し、通気性に優れたものを選ぶとよいでしょう。
また、定期的に寝返りをサポートすることも重要です。2~3時間ごとに犬を抱き上げて体位を変えてあげることで、同じ箇所に負荷がかかり続けることを防げます。
寝返りをサポートする手順
1.犬のお腹側から肩の下に片手を入れ、もう一方の手で腰を支えて抱きかかえる 2.肩と腰を支えながら体を起こす 3.犬のお尻を膝に乗せる 4.犬の体が反対になるように犬のお尻を置く 5.ゆっくりと寝かせる |
寝返りをサポートする際は、背中を軸にせず、犬のお腹を軸にして回転させることが大切です。背中を軸にすると内臓に負担がかかり、食道に残っている食べ物が逆流して気管に入るリスクがあるためです。十分注意して寝返りをサポートしましょう。
2-3.排泄をサポートする
寝たきりの状態では、横になっているために重力の影響で排泄が進みにくくなります。このような場合、お腹を時計回りに優しくマッサージしてあげることで、愛犬の排泄を助けることができます。
寝たきりになると自分でトイレに行けなくなるため、オムツを履かせる必要があります。排泄後は、汚れを放置しておくと皮膚炎を引き起こす可能性があるため、なるべく早く清潔にしてあげましょう。
あわせてお尻周辺の毛をあらかじめカットしておくと、排泄物が毛に付着しにくくなり、汚れを拭き取る際の手間が軽減されます。
2-4.食事をサポートする
老犬が寝たきりになると、消化吸収機能の低下に加え、重力の影響を受けて誤嚥のリスクも高まります。そのため、食事面でのサポートが必要です。
寝たきりになった老犬の食事をサポートする方法
・好きなペースで食べられるよう、なるべく自分で食べさせる ・食道に詰まらないように食器の位置を高くする ・ゆっくりと少量ずつ与える ・ゼリーや寒天で固めて与える(誤嚥を防ぎ、かつ水分補給にもなる) |
もし、これらの方法を試しても愛犬が食事を取れなくなった場合は、速やかにかかりつけの獣医師に相談してください。
2-5.ストレッチ・マッサージをする
寝たきりになると筋肉量が低下してしまいます。そのため、皮膚を優しくさすったり、揉んだり、圧迫するようなマッサージを取り入れ、皮膚や筋肉の血流を促進させてあげましょう。また、長時間寝たままだと関節が徐々に固まってしまうため、関節をゆっくりと曲げ伸ばしするストレッチも効果的です。
ただし、ストレッチやマッサージを無理に行うとケガの原因になるほか、床ずれが起きている箇所に対して行うと症状を悪化させることがあります。愛犬のリアクションや状態をしっかりと確認しながら、無理のない範囲で優しく行うことが大切です。
2-6.適度な刺激を与える
寝たきりの犬は基本的に同じ場所にいることが多く、外部からの刺激が減少します。その結果、脳神経細胞が衰えて認知症になるリスクが高まります。また、日光を浴びる機会が減ることで体内時計が乱れ、昼夜逆転や夜鳴きといった問題も発生しやすくなります。
脳を活性化させ、健康を保つためには、適度な刺激が必要です。日中はできるだけ愛犬に話しかけたり、スキンシップを増やして脳への刺激を与えましょう。また、日光を浴びることは体内時計の調整に役立つため、日中は日光が当たる場所に愛犬を移動させることも重要です。
さらに、犬をカートに乗せて屋外を散歩することもおすすめです。自力で歩けない犬でも、外の景色や音、光といったさまざまな刺激を受けることで、感覚機能を維持しやすくなり、より良い精神状態を保つ効果が期待できます。
3.寝たきりになった犬に起こりうる問題と対処法
犬は寝たきりになると体の衰えが加速し、以下の問題が起こるおそれがあります。
寝たきりになった犬に起こりうる問題
・寝ながらもがいている ・何度も吠える ・ご飯を食べない |
各問題の原因と対処法について解説します。
3-1.【原因】寝ながらもがいている
犬が寝ながらもがいているのには、複数の原因が考えられます。
寝ながらもがく場合に考えられる原因
・立ちたい・動きたいという欲求 ・病気・薬の影響による落ち着かなさ ・ベッドが体に合わない不快感 ・オムツへの嫌悪感 ・認知症による混乱や不安 |
3-1-1.【対処法】寝ながらもがいている
寝ながらもがく場合、いくつかの対処法が考えられます。まず、鎮静効果が期待できるカモミールローマンなどのアロマを使用してみると、犬が落ち着くことがあります。また、状況に応じて犬用の車椅子に乗せることで、動きたいという欲求を満たしつつ安心感を与えることもできます。
ただし、もがき続ける場合は他の問題が隠れている可能性があるため、かかりつけの獣医に相談することをお勧めします。行動診療科の受診も有効で、犬の状態に合わせた具体的なアドバイスや治療法を教えてもらえるでしょう。
3-2.【原因】何度も吠える
寝たきりの犬が何度も吠える場合、いくつかの原因が考えられます。
寝たきりの犬が吠えるときに考えられる原因
・不安やストレス ・痛みや苦しみ ・不快感や排泄などに関する訴え・要求 ・認知症による混乱や不安 |
3-2-1.【対処法】何度も吠える
犬が何度も吠える場合は、その原因に応じて対処することが重要です。例えば、不安やストレスが原因であれば、スキンシップを増やして犬に安心感を与えることが効果的です。痛みや不快感を訴えている場合は、排泄のサポートや体位の変更など、物理的なケアを行いましょう。
吠えに対しては、抗不安薬や鎮静剤、睡眠薬、サプリメントなどが効果を発揮する場合もありますが、これらの薬を長期間使用すると効果が薄れたり、副作用として認知症の進行が早まる可能性があります。そのため、使用を検討する際は必ずかかりつけの獣医に相談し、適切な処方やアドバイスを受けることが大切です。
愛犬の夜鳴きが気になる方は、コラム老犬の夜鳴きは何が原因?対処法と飼い主にできることを紹介も参考にしてください。
3-3.【原因】ご飯を食べない
ご飯を食べないときに考えられる原因は以下のとおりです。
寝たきりの犬がご飯を食べないときに考えられる原因
・基礎代謝、運動量、筋肉量の低下による必要エネルギー量の減少 ・消化吸収機能の低下 ・嗅覚や味覚の衰え ・食べ物の好みの変化 ・ストレス ・歯や口のトラブル ・痛みや苦しみ ・病気や薬の影響 ・認知症による混乱 |
3-3-1.【対処法】ご飯を食べない
犬がご飯を食べない場合は、低下した消化機能や感覚機能に合わせて工夫をすることが大切です。例えば、流動食や水分を多く含む食事に変更したり、食べ物を温めて香りを立たせることで、嗅覚や味覚を刺激して食欲を促すことができます。
また、ストレスや痛みが原因で食べない場合もあるため、犬の様子を観察しながら、どのような食事が適しているかをかかりつけの獣医に相談しましょう。獣医のアドバイスに基づき、適切な食事や栄養摂取の方法を見つけることが最も効果的です。
4.愛犬の健康を維持するポイント
寝たきりになった愛犬が健康を維持し、できるだけ長く一緒に楽しく暮らすために、飼い主は以下3つのポイントを意識しましょう。
愛犬の健康を維持するポイント
・体に合った食べ物を与える ・生活環境を整える ・可能な限り運動させる |
4-1.体に合った食べ物を与える
老犬になると消化吸収能力や筋力が低下するため、それに合わせた食事に切り替えることが大切です。以下のポイントを参考に、愛犬に合った食事を提供しましょう。
老犬に合った食事
・加齢に伴う消化吸収能力と筋力の低下に対応するために、消化吸収の良い、良質なたんぱく質を与える ・加齢に伴う基礎代謝の低下で肥満になりやすくなるため、高カロリーの食事を与えすぎないように気をつける ・加齢に伴う関節の硬化を改善するため、コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチンなどの成分を含んだサプリメントを食事に取り入れる ・ドライフードを与えている場合は、消化吸収を助けるためにお湯でふやかしてから与える |
犬は基本的に毎日同じ食事を摂るため、良質なたんぱく質や関節に効果的な成分が含まれているかを確認することが重要です。もし食事に関して不安があれば、かかりつけの獣医に相談して、適切なアドバイスを受けるようにしましょう。
4-2.生活環境を整える
寝たきりの犬は、自分で快適な温度や湿度の場所に移動できなくなるため、飼い主がこまめに調整してあげることが大切です。例えば、愛犬が舌を出している場合は暑がっているサインなので、室温を下げて涼しくしましょう。また、被毛が蒸れているときは湿度を下げて快適にしてあげます。
犬が敏感に反応する光や音がある場合は、できる限り排除して静かで落ち着いた環境を整えることが重要です。生活環境を適切に管理することで、愛犬がより快適に過ごすことができます。
4-3.可能な限り運動させる
運動は犬の健康を保つ上で非常に重要で、特に散歩は運動機能だけでなく、外部からの刺激によって感覚機能の維持にもつながります。寝たきりの犬の場合、散歩は難しくなりますが、カートに乗せて屋外を歩くだけでも外の景色や音、匂いを感じることができ、感覚機能の維持に役立ちます。
無理に体を動かさせる必要はありませんが、できる範囲で外に連れて行ってあげることで、精神的なリフレッシュや健康維持に貢献することが期待できます。
足腰の老化が進んで歩くのを嫌がる前に、歩行をサポートするグッズを取り入れてみるのもおすすめです。例えば、ACCAPI®×SOZO®の「EQTペット用ネックバンド」は、首に巻くだけで効果を発揮します。
実際に着用いただいたお客様からも「散歩に行きたがらなかったのに、元気に歩き回るようになった」「お散歩の足が軽くなった」などの口コミが届いています。
ACCAPI®×SOZO®ペット用ネックバンドが気になる方はこちらのページもご覧ください。
まとめ|適切な介護をして愛犬との楽しい生活を続けよう
本記事では、老犬が寝たきりになった場合に飼い主ができる介護方法や健康維持のポイントを詳しく紹介しました。
寝たきりの原因として、老化や病気が挙げられます。介護の方法としては、清潔を保つ工夫や床ずれ防止、排泄や食事のサポート、ストレッチ・マッサージによる筋力維持、適度な刺激を与えることが重要です。
犬は言葉を発することができません。そのため、飼い主がペットの様子を気にかけ、上記ケアに取り組む「ペットメディケーション」を進めることが、愛犬の健康や快適な生活につながります。
※事業再構築補助金により作成
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