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コラム
健康だった愛犬でも、加齢や病気によって夜鳴きが気になるようになることも。夜鳴きの背景には慢性疾患や病気が隠されている可能性もあるため、早期に対処することで老犬の健康維持につながります。
この記事では、夜鳴きの原因として考えられることや、飼い主にできること、近隣住民への配慮について紹介します。「最近ペットの夜鳴きが気になっている」「愛犬にいつまでも健康でいてほしい」という方は、ぜひご覧ください。
1.老犬が夜鳴きをする原因
老犬の夜鳴きの原因として、主に以下の5点が挙げられます。
・ストレス ・空腹・喉が渇いている ・体の不調 ・認知症 ・加齢 |
それぞれの原因について、詳しく見ていきましょう。
1-1.ストレス
犬はもともと繊細な生き物です。環境の変化や飼い主とのコミュニケーション不足によってストレスを感じ、それが夜鳴きの原因となったり、人間では見過ごしてしまうささいな刺激もストレスとして受け取ってしまったりすることがあります。
犬がストレスを感じる場面(例)
・病院など、慣れない場所や苦手な場所に外出する ・引っ越しやリフォームによって住環境が変わった ・飼い主のライフスタイルが変わり、留守番する時間が長くなった ・赤ちゃんなど新しい家族が加わり、飼い主が自分以外に気をとられることが多くなった ・自分よりあとに家族になったペットと相性が良くない、関係性が築けない ・飼い主の環境や心境の変化により、散歩や遊びなど飼い主とコミュニケーションをとる時間が減った ・家族同士のケンカが増えた ・飼い主がイライラしたり、不安になったりすることが増えた ・家の中のしつけのルールが一定ではない(飼い主の気分で叱られたり褒められたりする) |
特に、長年慣れ親しんだ環境からの変化は大きなストレスであり、犬の不安や混乱を招く可能性があります。新しい環境に慣れるまで、焦らず優しく見守ることが大切です。
また、人間と同じで、室温や湿度も犬にとってはストレスの原因になります。暑すぎたり寒すぎたりすると、犬は快適に眠ることができません。特に老犬は、体温調節機能が低下しています。 夏は室温25度前後、冬は18~20度前後を目安に、涼しい場所を確保したり、暖かい寝床を用意したりしてあげるなど、温度管理に気を配りましょう。湿度も50~60%に保つことで、愛犬が快適に過ごせる環境を作れます。
1-2.空腹・喉が渇いている
犬は人間と違って、言葉でのコミュニケーションをとることができません。そのため、空腹や喉の渇きといった要求を、夜鳴きという形で伝えようとすることもあります。
飼い主が日頃から様子を注意深く観察し、行動や振る舞いから犬の思いを受け取ろうとすることが大切です。
1-3.体の不調
関節痛や内臓疾患など、体の不調を夜鳴きによって訴えることがあります。例えば老犬の場合、椎間板ヘルニアなど外科的なリスクが高まっている可能性も考えられます。また、内臓疾患は外見からはわかりづらく、気づかぬうちに症状が進行していることも。
愛犬が夜鳴きをするようになったら、まずは体のどこかに痛みや不快感がないかを確認しましょう。歩き方がぎこちない、特定の場所を触られるのを嫌がる、食欲がないなどの症状が見られた場合は、早めに動物病院を受診し、獣医師の診断を受けることが大切です。
日頃から注意深く愛犬を観察し、少しでも異変を感じたら獣医に相談すると早期発見・早期治療につながります。
1-4.認知症
認知症も夜鳴きの主な原因です。
犬も人間と同様、加齢とともに認知症のリスクが高まります。認知症になると、昼夜逆転の生活リズムになったり、見当識障害が起こったり、不安を感じやすくなったりするなどの症状が表れます。
また、認知症が進むと感情のコントロールが効きにくくなり、ちょっとした刺激でも夜鳴きが誘発されやすくなります。夜鳴きだけでなく、徘徊、トイレの失敗、飼い主の認識ができなくなるなどの症状が見られるケースも少なくありません。
愛犬の変化に戸惑うこともあるかもしれませんが、まずは落ち着いて獣医師に相談し、適切な治療やケアについてアドバイスを受けましょう。
1-5.老犬の夜鳴きの原因はほとんどが加齢
老犬の夜鳴きは、上記で説明したようなストレス、体の不調、認知症など、さまざまな原因が考えられますが、これらの原因のほとんどは加齢にともなって起こりうるものです。
愛犬が老犬期に入った場合は、夜鳴きだけでなく、その他の老化現象にも注意を払い、愛犬が快適に過ごせるようにサポートしてあげましょう。
2.老犬の夜鳴きが続く・・・飼い主にできることは?
「夜鳴きが気になるが、どうしてあげればよいかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
老犬の夜鳴きは、原因にもよりますが、運動や食事内容など普段の生活習慣を見直すことで改善できることもあります。そこで、本章では自宅でもすぐに実践できる、夜鳴きが気になる飼い主にできることを紹介します。
2-1.運動をさせる
運動不足は老犬にとって大きなストレスであり、夜鳴きが誘発される主な原因でもあります。犬も人間と同様、日中に体を動かすことでエネルギーを適度に発散し、夜には心地よい疲れとともに眠りにつきやすくなります。
特に以下のようなサインが見られたら慢性的な運動不足を疑い、日頃の運動量を増やしてみましょう。
・遊びをしきりにせがむ ・足元や体をなめる ・尻尾をむやみに追いかけまわす ・無駄吠えが増える |
犬の運動にはドッグランや散歩など、屋外での運動が最適ですが、室内飼いの場合はペットサークルなどのグッズもおすすめです。また、広い庭やベランダがあればビニールプールも運動につながります。
ただし、老犬は体力も筋力も若い頃とは違います。過度な運動はかえって体の負担につながることもあるため、無理のない範囲で運動させることが大切です。休憩をはさみながらゆっくり歩いたり、愛犬のペースに合わせて、無理なく楽しく運動できる時間を作ることで信頼関係の構築にもなります。
おすすめグッズ
ペットサークル | ペットサークルは犬のテリトリーを守り、安静に過ごせるエリアを確保するために有効です。また、広めのペットサークルを設置することで室内でも自由に動きまわることができ、運動不足の解消につながります。 |
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ビニールプール | 夜鳴きと同時に徘徊をしたり、徘徊によって夜鳴きが助長されてしまうケースがありますが、この対策として有効なのがビニールプールです。ビニールプールであれば怪我を防止でき、なおかつトイレを失敗しても掃除が簡単です。 |
ビーズクッション | ビーズクッションは、体圧を分散し、関節への負担を軽減する効果があります。老犬の体にやさしく、夜鳴きの軽減につながるでしょう。 |
2-2.食事を変える
老犬になると、消化機能が低下し、若い頃と同じ食事では胃腸に負担がかかってしまうことがあります。 消化不良から体調を崩したり、食事の味が合わなかったりすることが夜鳴きの原因となってしまうこともあるため、夜鳴きが気になる際は食事内容を見直すことも大切です。
ちなみに、犬には与えると危険な食べ物や注意が必要な食べ物があります。詳しくは、コラム「犬の寿命はどのくらい?愛犬が長生きするために飼い主ができること」でも解説していますので、あわせてご覧ください。
与えてはいけない・注意が必要な食べ物
アボカド | 果肉や皮に毒素があり、嘔吐や下痢を引き起こすことがあります。 |
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ぶどう | 腎不全や下痢などの中毒の報告が多く、腎臓病の犬は特に危険です。 |
プルーン | 葉、種、茎が有毒で、呼吸困難やショック症状を引き起こすおそれがあります。 |
なす | アクがカルシウムと結合すると、尿石症の原因になるおそれがあります。 |
いちじく | 皮、葉、果肉に中毒成分が含まれています。 |
生のぎんなん | 生のまま食べると中毒症状が起こることがあるため、与えないのが無難です。 |
生卵(白身) | 卵白に含まれるアビジンがビタミンB群のビオチンを分解してしまうため犬にはよくありませんが、しっかりと加熱すれば大丈夫です。 |
マカダミアナッツ | 食後12時間以内に嘔吐やけいれんなどの中毒症状が見られることがあるので、注意してください。 |
ネギ・にら・にんにく・たまねぎ | 血液中の赤血球を破壊し、溶血性貧血を引き起こすおそれが。犬が食べてはいけない食べ物の代表格といえるでしょう。 |
消化不良を起こしやすい食べ物
イカ・タコ | 身が硬いので、消化しにくく、嘔吐や下痢の原因に。 |
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ごぼう | 食物繊維が豊富でアクも強く、与えない方が無難です。 |
貝類 | 大量に摂取すると酵素チアミナーゼ(アノイリナーゼ)がビタミンB1を分解するため、ビタミンB1 (チアミン)欠乏を発症するおそれがあります。 |
えび・かに | 消化が悪く、殻を誤飲するおそれもあるので注意しましょう。 |
わかめ | 未消化のまま便に出て来てしまうことがあるので、与えないようにしましょう。 |
消化の良い食事に変えたり、1回の食事量を減らして回数を増やしたりすることで、胃腸への負担を軽減し、夜鳴きの改善につながる可能性があります。老犬用のフードは、消化吸収にすぐれたものが多く、栄養バランスも考慮されているため、おすすめです。
栄養バランスを整えたり、水分を補給したりという意味では果物類もおすすめですが、糖分の過剰摂取は老犬の内臓に負担をかけ、肥満にもつながるため避けるべきだとされています。
与えてはいけない果物、および注意が必要な果物
与えてはいけない果物 | ぶどう、レーズン、プルーン、グレープフルーツ、いちじく |
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注意が必要な果物 | レモン、桃、メロン、ブルーベリー、さくらんぼ、パイナップル、マンゴー |
2-3.𠮟るのは逆効果
老犬の夜鳴きがなかなか治まらない場合、近所への迷惑も気になってついつい叱りがちですが、夜鳴きに対して叱るのは逆効果になります。犬にとって叱られることは大きなストレスであり、慢性的なストレスはさらなる夜鳴きへとつながる可能性があるためです。
夜鳴きをした時は、頭ごなしに𠮟るのではなく、まずは優しく声をかけて安心させてあげましょう。 「大丈夫だよ」「そばにいるよ」と優しく語りかけ、撫でたり抱きしめたりするだけでも、愛犬の不安を和らげる効果があります。
3.夜鳴きによる近隣トラブルが気になる飼い主さんへ
夜中の犬の鳴き声は周囲に響きやすく、放置すると近隣トラブルにつながる可能性があります。老犬の夜鳴きがどうしても治まらない場合、落ち着くまでは近隣も含めた理解が必要です。
例えば、窓を二重サッシにする、防音カーテンを取りつける、防音マットや防音パネルを設置するなど、小さな工夫でも充分な防音対策につながります。窓の防音対策であれば、外の騒音を遮断する効果もあるため、犬への刺激防止にもつながります。
また、近隣トラブルに発展する前に、愛犬が夜鳴きをする可能性があることを事前に伝えておくことも有効です。「ペットのことで御迷惑をおかけするかもしれませんが、ご理解いただけると幸いです」など一言添えたり、散歩で出会った際には挨拶を欠かさないなど、日頃から良好な関係を築いておくと近隣の理解も得やすくなるでしょう。
とはいえ、あまりに長期間夜鳴きが続くと、飼い主にもストレスがかかります。困った時は自分一人で抱え込まず、かかりつけの獣医師へ相談することも視野に入れておきましょう。
まとめ|老犬の夜鳴き、原因を見きわめて愛犬に寄り添うケアを
この記事では、老犬の夜鳴きの原因や対処法、近隣トラブルへの対策、そして飼い主にできることを紹介しました。
愛犬の夜鳴きは、加齢に伴うストレス、体の不調、認知症など、さまざまな要因が考えられます。「もう歳だから」と諦める前に、根本的な原因を見きわめることが大切です。
たとえば、環境の変化に敏感な愛犬には、いつものおもちゃや毛布をそばに置いて安心させてあげたり、関節が痛む愛犬には、クッションやベッドで寝心地を良くしてあげたりと、ちょっとした工夫で夜鳴きが改善されることもあります。
原因がわからず、夜鳴きも続いている場合は、専門家の力を借りることも大切です。困った時には自己判断せず、かかりつけの獣医師に相談し、適切なアドバイスをもらうことも検討しましょう。
※事業再構築補助金により作成
【記事執筆者】ACCAPI®×SOZO®編集部|ペットがいつまでも健康で、家族みんなの毎日が豊かになるように。本コラムでは、愛犬の健康や散歩に関する情報をお届けしています。
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