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犬のマウンティングにはどう対処するべき?ケース別の原因・対処法も解説

愛犬がマウンティングをしている姿を見て、「やめさせるべきなのかな?」「どう対処すればいいんだろう」と疑問が浮かぶ飼い主の方もいるのではないでしょうか。

本記事では、犬のマウンティングについて網羅的に解説します。対処法をケース別に解説するので、本記事を最後まで読めばマウンティングを止められなかった場合に起こりうるさまざまな問題に対して、適切に対処できるようになります。

マウンティングに関する基礎知識やNGの対処法なども解説するので、ぜひ参考にしてください。

 

1.犬のマウンティングとは?

犬のマウンティングとは、両前足で他の犬やぬいぐるみなどのマウンティングの対象にしがみついて腰を振る行為を指します。

マウンティングは交尾をしているときの格好に似ているため「発情している」と勘違いされやすい行為ですが、主に力のアピールに使われます。マウンティングの対象に「自分の方が強いのだ」と主張しているのです。

ちなみに「マウンティング」という言葉は、「あの人はマウンティングを取っている」と自慢話や相手を下げる言動をする人に対する侮蔑的な表現として使われる場合もありますが、これは犬を含めた動物が行うマウンティングが元になっています。

 

1-1.犬がマウンティングするときに考えられる理由

犬がマウンティングする動機にはさまざまなものがあり、一概に「これが原因だ」と言いきれるわけではありませんが、主だって考えられる理由はいくつかあります。

犬がマウンティングするときに考えられる理由

1.身体能力を高める成長過程だから

2.オスのホルモンが影響しているから

3.性本能があるから

4.自分の優位性を示したいから

5.構ってほしいから

6.遊びが激しくなっているから

7.葛藤による転移行動が起こっているから

マウンティングは主に精巣から分泌される「テストステロン」が多いと行われやすいことから、メス犬よりオス犬の方がマウンティングをする割合が高いです。とはいえメスであってもオスの兄弟が多いと、母犬のお腹の中で兄弟のテストステロンから影響を受け、マウンティングしやすくなる場合もあります。

7つ目の「葛藤による転移行動」とは、相反する欲求が同時に存在するときにどうすればいいか分からずに取る行動です。例えば初めて会う来客から餌を差し出されると「餌を食べたいけど、怖いから近づきたくない」と葛藤し、マウンティングしてしまう・・といったことが考えられます。

 

1-2.マウンティングをしやすい年齢・犬種

マウンティングをしやすい年齢は生後6ヶ月から11歳くらいまでと言われています。犬は生後6ヶ月頃からコミュニケーションや遊びでマウンティングをするようになり、11歳以降は加齢によって体力が衰えてしなくなります。なお、これは目安であり、個体によっては生後2〜3ヶ月頃からマウンティングをする犬もいます。

ちなみに、2013年に行われた研究によって、小型犬はマウンティングしやすいということが明らかになりました。具体的にはトイ・プードル、チワワ、柴犬がマウンティングをしやすいと言われています。

 

1-3.マウンティングで起こりうる問題

マウンティングには以下4つの問題が起きるリスクがあります。

  • ・散歩中に他の犬や歩行者とトラブルになる
  • ・見た人が不快感を覚える
  • ・犬自身の体を傷つける
  • ・飼い主の指示に従わなくなる

他の犬にマウンティングしてしまうと、相手の犬が挑発と捉えてケンカになってしまう場合があります。

人間に対するマウンティングでは、相手がお年寄りや子供などの比較的体の弱い人だと転倒させてケガを負わせてしまうかもしれません。またマウンティングの現場に居合わせるだけでも「腰を振る」行為によって、見た人へ不快感を与える恐れもあります。

犬自身の体を傷つけるリスクもあります。考えられるケガは腰への負担による椎間板ヘルニアと陰部の摩擦による陰部の裂傷・化膿です。

犬が優位性を示すために飼い主にマウンティングする場合、しっかりと叱らないと自分が優位に立っていると勘違いして指示に従わなくなる恐れがあります。

 

2.【共通】犬のマウンティング対処法

犬のマウンティングに対処するとき、特に以下の3つを意識することが大切です。

  • ・吠え・噛みつきをコントロールする
  • ・ストレスを解消してあげる
  • ・去勢手術をする

本章ではケースを問わないマウンティング対処法について1つずつ解説します。

 

2-1.吠え・噛みつきをコントロールする

犬はマウンティングの対象に吠えたり噛みついたりする場合があります。吠え・噛みつきはケガや近隣トラブルなどの原因になるため、飼い主のコントロールが必須です。

吠えに対する対処法は、対象が飼い主か他の犬や通行人などの他人によって異なります。

飼い主に向かって吠える場合は、反応しないようにすると「吠えても構ってもらえない」と理解して吠えにくくなることも。

他の犬・通行人に吠える場合は、愛犬とコミュニケーションを取ったり犬が嫌いな音を出したりして注意を逸らすと吠え防止になります。

噛みつきはリードを引いてコントロールするのが効果的です。飼い主に噛みつくときは短い言葉で叱ると、叱られているうえに「吠えても構ってもらえないんだ」と理解し、次第に吠えなくなるでしょう。

 

2-1-1.犬の吠えが騒音トラブルになった場合

もし犬の吠え声が通報され、騒音トラブルとして問題が大きくなってしまった場合、法律・条例違反とされてしまう可能性も。

犬が不必要に吠える「無駄吠え」は動物愛護管理法に抵触するものの、法的強制力が弱い努力義務として定められており違反しても逮捕はされません。ただし民法718条1項や各自治体の定める迷惑防止・騒音防止条例に違反している場合は罰則が課せられる場合があります。

愛犬の吠えが通報され問題が大きくなりそうであれば弁護士に相談しましょう。

 

2-2.ストレスを解消してあげる

愛犬のストレスを解消してあげることが、健康維持だけでなくマウンティング予防にもつながります。具体的なストレス解消方法には以下の5つがあります。

犬のストレスを解消する方法

ストレスの解消方法 解消できる理由・ポイント
散歩・遊びの時間を増やす 犬にとって運動はストレスを解消する最も有効な手段であるため、運動する機会を与えるとよい
栄養バランスの整った食事を与える 心身が健康になればストレスが溜まりにくくなるため、栄養バランスが重要。特に犬にとっての5大栄養素、炭水化物、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルを犬種・年齢に合った分量を与えるとよい
スキンシップを取る スキンシップを取ると犬が安心してストレスが解消される。スキンシップをするときはブラッシング・マッサージを同時にするとよりストレス解消の効果が高まる
「噛むおもちゃ」を与える 犬は噛むのが好きなので犬用ガムを含めた「噛むおもちゃ」をあげるとストレス発散になる
快適な環境を作る 快適な空間はストレス解消につながる。清潔を保ち、犬の体調に合わせた温度・湿度管理を行うとよい

 

2-3.去勢手術をする

去勢手術を行うとテストステロンを分泌する精巣が切除されるため、マウンティングの予防にもつながります。

去勢手術は全身麻酔をした状態で行われ、陰嚢の少し上を切開して精巣を取り出します。手術時間は10~30分程度で、健康状態に問題がなければ当日の帰宅が可能です。傷口も1〜3cmほどで目立つものではありません。

費用は18,000円ほどかかりますが、永久的にテストステロンの分泌を抑制してくれる効果を考えると、検討価値のある対処法といえます。

 

3.【ケース別】犬のマウンティング対処法

マウンティングの対象・起こりうる問題によって対処法はさまざまですが、それぞれの状況に合った適切な対応を知っておくことで、より愛犬に寄り添ったケアができるでしょう。

本章では以下5つのケースにおける対処法を解説します。

  • ・同居する犬にマウンティングする場合
  • ・クッションやぬいぐるみにマウンティングする場合
  • ・飼い主にマウンティングする場合
  • ・散歩中に他の犬・通行人にマウンティングする場合
  • ・愛犬が他の犬からマウンティングされた場合

各ケース別の対処法を参考に、日々のマウンティング対策に役立ててください。

 

3-1.同居する犬にマウンティングする場合

同居している犬にマウンティングする場合は、多少であれば遊びの範疇である可能性が高いため無視しても構いません。

もしマウンティングが相手にケガを負わせるほど激しい場合は、犬同士の生活空間を分け、一緒にいなければならないときはリードをつけて飼い主がマウンティングを止められるようにするなど対策をとることで、ケガを予防できます。

 

3-2.クッションやぬいぐるみにマウンティングする場合

クッションやぬいぐるみなどの柔らかい物体にマウンティングする場合は、放置しても問題ありません。むしろマウンティングをやめさせると、マウンティングの対象が他の犬や人などの生き物になる恐れがあります。

対象になった生き物が危険に陥らないために、また、愛犬自身が陰部の摩擦・足腰にかかる負担によってケガをしない限りは、クッションやぬいぐるみなどへのマウンティングは放置しておいても問題ないでしょう。

 

3-3.飼い主にマウンティングする場合

飼い主にマウンティングする場合はしつけを刷り込むのが効果的です。

飼い主へのマウンティングは、愛犬が大型犬の場合や飼い主の足腰が弱い場合などはケガにつながる可能性があります。さらに飼い主側がされるがままになっていると、愛犬は力関係を間違えて指示に従わなくなる恐れも。

飼い主に対してマウンティングをするときは、家の中でもリードをつけて止められるようにした状態で「お座り」や「伏せ」などの指示をし、指示に従わなかったら叱り、従えばフードを与えたり褒めたりすると、しつけを通じてマウンティング予防ができます。

なお、しつけは「一朝一夕でできるもの」ではありません。愛犬がわかってくれるまで、何度も忍耐強く続けることが大切です。

 

3-4.散歩中に他の犬・通行人にマウンティングする場合

先述のとおり他の犬・通行人へのマウンティングはケガにつながる恐れがあります。他の犬・通行人へのマウンティングは、散歩中はリードを短く持ってすぐに止められる状態にしておくとケガ予防に効果的です。

いつもの散歩コースに他の犬・通行人が多い場合は、人通りが少ない時間帯を選んで散歩したり散歩コースを変えたりすると接触を避けられます。

 

3-4-1.もし愛犬がケガさせてしまったら……?飼い主に求められる対応

万が一愛犬が他の犬・通行人にマウンティングをしてケガさせてしまった場合は、以下3つの対応が必要です。

  • ・適切な治療に貢献する
  • ・事故発生届出書を地域ごとに指定されている届出先へ提出する
  • ・動物病院を受診して狂犬病の有無を確認する

初めに行うのはケガの処置につながる行動です。ケガの度合いに合わせて自分で応急処置をしたり、病院に連れて行ったり、救急車を呼ぶなどの対応を行います。

その後は、居住地ごとの法的に定められている行動を取ります。

例えば東京の場合「東京都動物の愛護及び管理に関する条例」の第29条によって、飼い主は事故が発生してから24時間以内に、保健所や動物愛護相談センターなどの地域で決められている届出先へ事故発生届出書を提出しなければなりません。

第29条では他にも、事故発生後は48時間以内に狂犬病の有無を確認するため動物病院を受診し、狂犬病予防注射が済んでいるかの申告が定められています。

事故発生届出書を提出しない・虚偽の内容で提出すると、上記条例の第39条、第40条によってペナルティとして5万円以下の罰金・拘留が課せられるため、必ず必要事項に正しい内容を記入して住んでいる地域の届出先に提出しましょう。

参考:東京都動物の愛護及び管理に関する条例

事故が発生したときは、速やかに治療への協力、事故発生届出書の提出、動物病院での狂犬病の有無の確認を行ってトラブル解決に働きかけてください。

 

3-5.愛犬が他の犬からマウンティングされた場合

散歩中に愛犬が遭遇した他の犬にマウンティングされたときは、愛犬が応戦しないようにリードを引いてコントロールするとトラブルを予防できます。

また以降はその犬と接触しないように散歩コースを変える・出くわしたら迂回するなどの工夫をすると安全です。

 

4.犬のマウンティングへのNG対処法

マウンティングへの対処の仕方を間違うと、マウンティングをやめさせられないだけではなく、より激しくなったり飼い主との信頼関係に亀裂が入ったりする恐れがあります。

例えばマウンティングを叱るときに「ダメよ〜、もう〜」など優しい声色で説教するのはおすすめしません。なぜなら、犬は褒められていると勘違いしてしまい、より激しくマウンティングする恐れがあるからです。

一方で「力関係を示したいから」と愛犬のマウンティングを真似て愛犬の上に覆い被さるのは、愛犬を怖がらせたり飼い主との対立構造を生み出したりする恐れがあるためNGです。

 

まとめ|犬のマウンティングに適切な対処をしてストレスのない生活を送ろう

最後に、本記事で解説した犬がマウンティングするときに考えられる原因と対処法をまとめました。

犬がマウンティングするときに考えられる理由

1.身体能力を高める成長過程だから

2.オスのホルモンが影響しているから

3.性本能があるから

4.自分の優位性を示したいから

5.構ってほしいから

6.遊びが激しくなっているから

7.葛藤による転移行動が起こっているから

【共通】犬のマウンティング対処法

・吠え・噛みつきをコントロールするとケガや隣人トラブルなどを予防できる

・運動や栄養バランスの取れた食事作りなどでストレスを解消してあげるとマウンティングをしにくくなる

・去勢手術で精巣を切除すると、主に精巣から分泌される、マウンティング誘発するホルモン「テストステロン」を抑えられる

【ケース別】犬のマウンティング対処法

・同居する犬にマウンティングする場合は、遊びの範疇であれば止めなくても構わない

・クッションやぬいぐるみにマウンティングする場合は、犬自身の体が傷つかなければ止めなくても構わない

・飼い主にマウンティングする場合は、忍耐強くしつけを刷り込む

・散歩中に他の犬・通行人にマウンティングする場合は、リードを短く持ちコントロールする

・愛犬が他の犬からマウンティングされた場合は、接触しないように工夫する

犬のマウンティングは、原因を見極めて適切に対処をすることが大切です。愛犬との楽しい生活を目指す飼い主の皆さんはぜひ、本記事で紹介した情報をお役立てください。

※事業再構築補助金により作成

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【記事執筆者】ACCAPI®×SOZO®編集部|ペットがいつまでも健康で、家族みんなの毎日が豊かになるように。本コラムでは、愛犬の健康や散歩に関する情報をお届けしています。